どちらともない荒い息遣いに神経が焼ききれる。

通常の体温の筈なのに酷く熱く感じるのは、既にこの身が燃え上がっているからなのか。

 

秘所から時折流れ出る蜜は先ほど放たれたものだ。

先ほど2度も達している(彼は恐らくそれ以上だ)筈なのに、衰えるどころか更に硬度を増す自身に普段なら自嘲の一つや二つ漏れている頃なのだが、渇望し膨れ上がる欲のせいで苦笑をもらす暇もない。

 

彼の屹立しているものに音を立てて吸い付くと、途端に鼻にかかった声が漏れる。

今まで我慢していたのだろうか、その刺激が皮切りとなってくぐもった声が明瞭な喘ぎに変わった。

つ、と舌を這わせ、とめどなく漏れる液を舌で掬い取る。そんな些細な刺激がもどかしいのか、彼の腰が物欲しげにゆらりと揺れた。

 

強請っているのか、そうでないのか。

 

それは彼にしかわからないが、こういう場合とりあえず好意的に考える事にしている。

しかし、そうそう与えはしない。代わりにそっと新城を受け入れるであろう場所をなぞり、その間も固くなったものに舌を這わせ、達しない程度に刺激を与えてやる。

先ほど新城が流し込んだものと、彼自身の先走りでてらてらとぬめるそこをなぞるたびに、彼の体が痙攣するように震えた。

 

顔が見れないのが残念だ、と一瞬思ったが見れなくて良かったのかもしれない、とすぐに思いなおす。

 

快感に喘ぎ、顔を愉悦に歪ませる笹嶋の顔をまともに見てしまったら、自分が達しない自信がまるでないからだ。

 

いつまでたっても望む快楽を与えられない事に焦れたのか、自分でしようとする笹嶋の手を払いのけて、ひくひくとうごめくそこに舌を入れる。

短い悲鳴のような声が断続的に上がって、腰が浮き上がる。先ほど払われた手が、たごんだシーツを握り締めた。

達しないように根元を押さえて、舌を出し入れする。

湿った音と、彼の喘ぎと、自分の獣のような息遣いが部屋に響き、部屋に言い知れぬ熱気が篭り始めた。

夜の匂い、と言うのだろうか。

それと雄の匂いとが混ざり合い、濃密な空気をかもし出している。

広げるように蠢かすと、伸びてきた手が新城の短い髪の毛を掴む。快感に耐えるように吐き出される息と、断続的な喘ぎに切羽詰ったような感を受けて知らずに口の端が弧を描いた。そろそろ頃合だろう。

自身もすでに準備が出来ている。開いている彼の足を持ち上げてずっと頭の方に押しやり、ひくつくそこへとあてがった。

ずるり、と難なく先端が沈む。切れてはいないようだが(先だって受け入れているせいだが)やはり異物感がなれないのか、笹嶋の眉根に皺が寄る。

一番太い部分が埋もれてしまえばあとは簡単で、そのままゆっくりと自身を沈めると暫く彼が慣れるまで待ってやった。

 

自分とは違う心臓の拍動が、それを通じて聞こえてくる。

食いちぎらんばかりに新城を締め付ける彼に思わず天を仰いだ。

早くしないと此方が先に喰われてしまいそうだ。力が入っている腹筋を和らげる為に、軽く彼を扱いてやる。

何かに耐えるような息遣いだったそれが徐々に甘い響きに変わるのに比例して、締め付けが緩まっていく。

ずるり、と少しだけ引き抜くと、また彼の中に戻す。

それの繰り返し。

 

背筋にしびれるような快感が走って、新城は思わず吐息を漏らす。

そこから響く濡れた音と、濃密な香り。そしてなにより、彼の喘ぎが新城の脳内を緩くかき回す。

殺したいほど愛おしく、狂うほど求めても手に入らない貴方。

しかしこの瞬間だけは、自分のモノだという実感が湧く。

 

深く深く突き刺して、限界まで。

高く高く上り詰めて、限界まで。

 

余りの激しさと、痛みと、相反する快楽のせいか笹嶋が意識を飛ばす。

もう当に抵抗する力を失った両腕をぎりぎりと掴んで、一心に猛る自身を彼に打ち付ける。

 

心臓に向かってまっすぐに。彼の急所を抉ってやる。

 

もしこの有様を誰かが見ていたのなら、獣のようだと形容しただろう。

獲物を捕らえ、肉や臓腑を喰らうケダモノ。

出来る事ならそうしてしまえたら、と思う。

 

いっそ貴方を僕の血肉にしてしまえたら。

こんなに狂うこともないんでしょうがね。

 

目の前が白んできて、ふと限界が近い事を知る。

彼の方をみれば当に限界を超えてしまっていて、だらりと力なくたれた足がそれを物語る。

 

開放される瞬間。

これは死ぬ時に感じる感覚と似ているのかもしれないとふと思い至って、新城はひっそりと嗤った。

 

 

貴方も、感じているだろうか。